コロナウイルス蔓延に、外国人として私が思うこと

私のいる、とある国のとある田舎町でも

コロナウイルスの脅威は感染者の増加とともに広がりました。

恐怖はこの田舎町の人だけでなく、

おしなべて「気の良い」と言われている人々を変えてしまっているように思います。

 

例えば「差別」。

もともと国全体でアジア人に対する人種差別はありましたが、それが一層悪化、

アジア系の人が殴られたり、すれ違いざまに「コロナ」と怒鳴られたり、

「コロナを持ち込んだ」とつばを吐きかけられたり、殺菌スプレーをかけられたり・・・

信じられないようなことが起こりました。

 

クルーズの乗客や海外からの帰国者など、同国人に対しての差別もあります。

この中から多くの感染者が出ているので、

コロナウイルスを持ち込んでいると言う恐怖からなのでしょうか、

まるでクルーズや海外に行くこと自体が悪いかのような言われようです。

 

最前線で見えない敵と戦っているメディカルスタッフにも

怒りが向けられました。

その人達がウイルス感染を拡大しているとでも思っているのか、

彼らは働けるのに、

自分の業界はシャットダウンさせられ、自分が失職したことへの不満からなのか、

パラメディックが襲われたり、ケミストが買い物中に怒鳴られたりするケースもありました。

 

そう言えば、トイレットペーパーをめぐり、取っ組み合いが起こりました。

恐怖やフラストレーションで、みんなとてもイライラしているようです。

 

それで

「私達」と「彼ら」を区別(差別)する柵を設けてしまっているのかなと思います。

「私達」とは

  自分(達)の地域の人、自分(達)と同じようなことしかしない人、

  つまりよく見知った「私達」

「彼ら」とは

  外国人はもちろんのこと、他州の人々、自分たちとは違う人

  海外に行ったり住んだり、自分たちの知らないこと、やらないことをする「彼ら」。

 

そして

「私達」だけなら安全だったのに

「彼ら」がコロナウイルスという危険な病原菌を持ってきた、

「私達」だけなら何もかもうまく行っていたのに、

「彼ら」が(帰って)来たから、こんなに深刻な問題が始まってしまった、

だから

「彼ら」は「私達」の所へは来ないでほしい・・・

と言う感じなのかも知れません。

日頃の鬱憤ばらしもあるのかもしれませんが、

すべて他の人のせい、他罰的になっているのだと思います。

 

普段は多国籍、多文化を誇るこの国ですが、今や国はロックダウン、

自国民、もしくはその配偶者の帰国以外、海外から人が来られなくなりました。

勉強中だった外国人留学生は、帰国するように勧められていますし、

今後留学する予定だった学生のビザも、全て取り消されました。

 

確かに多くの施設がロックダウンされ、

自分も職を失い、家族を抱えて将来が心配な時に、

他の人や外国人のことなんてかまっていられないというのも

わからなくはありません。

 

でも、

コロナウイルスに罹った人も、

罹りたくて罹ったわけではありませんし、

ましてや感染させよう、拡散させようなどと思っているわけがありません。

 

このコロナウイルスは治療法の見つかっていない病、

その上重症化すれば、死に至るかも知れない病ということで

恐怖の大きさは比類のないものなのかも知れませんが、病気です。

病気なら、普通は犯人探しなどしないでしょう。

それに

自分も気づかないうちに罹っていて、広めている側かも知れません。

 

「人は人を差別するけれど、ウイルスは人を差別しない」と誰かが言いました。

世界中に蔓延してしまった状況を見ると、鋭い皮肉だと思います。

 

病気が蔓延してしまった今こそ、

「私達」「彼ら」と言う区別の柵を取り払って差別を無くし、

みんなで協力し合い、支え合う時ではないかと思います。

とあるこの国、とあるこの田舎町に、

今こそ本当の意味での多国籍、多文化が問われているように感じます。