誰が誰やら

学生時代は一夜漬けの連続でした。

運動部だったため勉強時間もあまり取れなかったのと

記憶力にはそこそこ自信があったからです。

学生時代の試験勉強は、この記憶力一つで乗りきったと言えます。

 

アルバイトで店員をした時も、この記憶力が威力を発揮、

お客様の顔がすぐに覚えられ、ちょっとした会話などに役立ちました。

 

ところがこの自信が大きく揺らぐ時が来ました。

とある国のとある田舎に住み始めてからです。

 

ここの人からしたら、私は数少ないアジア人なので、

名前も顔もよく覚えてくれているのですが、

私にとっては「みんな同じ白人」としてしか映らないのです。

特に女性が難しい。

だって

ほとんどがサングラスをかけているので目や目の色が見えないし、

同じように髪をひっつめているからです。

 

さらに

女性は髪の色を頻繁に変えるので、

髪の毛は記憶の助けにはなりません。

その上、

普段は全く化粧気がないのに、

外出時やパーティーなどではまさに「やる時はやる」と言う力の入れ様、

つけまつげに濃いアイシャドー、ノーズシャドーにアイライン・・・

服装は、もちろんドレスアップ、

まるで別人で、いっそう誰が誰だかわかりません。

 

せめて名前だけでも覚えようとするのですが、土地柄なのか

星の数ほどのトニー(男女とも)、ジェシー、ジェニー、ピーター、リンダ・・・

それにルイス・クーパーなどは名前でもあり名字でもあり。。。

その上、何もかも短くするのが好きなこの国、

ダイアナやダイアンが時によって、人によってダイと呼ばれ

マイケルが、これまた時によって、人によってマイク、ミックと呼ばれ・・・

ますます混乱します。

 

誰だかわからない人からいきなり声をかけられるのは、まさに恐怖。

それならばと、こっちもサングラスをかけてみるのですが

あっちは難なく私だと見抜きます。

 

ただでさえおぼつかない英語なのに、容赦ない早口、

相手のリズムに乗り遅れると、全く理解できなくなって、

ただの音の羅列でしかありません。

それでも必死に誰だか探りながらの会話、

まさに暗闇を手さぐりで歩くが如く・・・