キャドバリーチョコレートのCMに思う

とある国のとある田舎町で見たテレビCMに

心がほっこりするものがありました。

母親と一緒に学校から帰宅途中の4,5歳位の女の子が、

母親の誕生日プレゼントにチョコレートを買うという

キャドバリーチョコレートのCMです。

実際には2018年に制作されたものだそうで、

ネットにも、「とても可愛い」とすでに紹介されています。

 

あらすじを言うと

「チョコレートください。ママのためなの」と言った女の子ですが、

チョコレートを買うだけの十分なお金を持っていません。

そこで足りない分、カウンターに自分の宝物を並べます。

 

最初はきれいなボタン2つ、

店主は「それじゃだめだな」と言う顔です。

そしてたぶん何かの賞で取ったメダル、

それからだいぶ躊躇しながら、ピンクの指輪を差し出します。

そして最後に自分の一番の宝物、小さいユニコーンをそっと置きます。

店主がちょっと驚いた顔になります。

 

そしてその店主は、女の子の払った ”お金” をガサっと集め、

女の子にチョコレートを渡し、

女の子は嬉しそうにその板チョコを受け取ります。

すると店主が

「お釣りだよ」と言って、ユニコーンを返してあげます。

女の子はチラッと店主を見てから、電話していた母親のところに戻り

「ママ、お誕生日おめでとう」と言って、そのチョコレートを渡します。

母親は「ありがとう」と言って、すぐさまその女の子をハグします。

その様子を見ている店主も、満足そうに微笑む・・・

そういうCMです。

 

おずおず、チラチラと店主の顔を見る女の子の表情もとても可愛らしいし、

宝物が出てくるたびに、違う表情をする店主の演技も素晴らしい。

よくできた、心暖まるCMだと思います。

でも何より感動する点は

忙しく懸命に働く母親の誕生日に、何かプレゼントを買いたいと言う女の子の気持ちと

外で電話している若い母親をチラッと見て、なんとなく家庭状況を察し、

女の子の気持ちをわかってあげる店主の優しさが、

巧みに、でも自然に表現されているところです。

 

それで、去年行った子どものスポーツ大会を思い出しました。

そこではスポーツクラブの資金集めのためにキャンティーンを設け、

会員の母親たちが、軽食や飲み物を売っていました。

 

ジュースを買いに行ったはずの一人の子どもが、何も持たずに帰って来たので、

その子の母親が「ジュースはどうしたの?」と訊くと、

「『10セント足りないから、ママから貰って来なさい』って言われた」と言うのです。

母親は黙って財布から10セントコインを出して渡し、

子どもは走ってキャンティーンに戻りました。

そして、今度はジュースを持って嬉しそうに戻ってきました。

 

確かに資金を集めるためのキャンティーンなので、

10セントでも多い方が良いに決まっています。

それに

「わずか10セント足りなくても、物は買えない」と言う教えにもなるかも知れません。

でも

「私なら、10セントくらい自腹を切るかも」と感じたことを思い出しました。

 

状況も条件も全然違うので、

このCMに出てくる店主とキャンティーンの母親達を比べて、

どちらが正しいとか、

どちらの方が優れているとかを言うつもりは全くありません。

お金は、もちろん大切だからです。

 

ただ

買い物に代金を払うのは当然と感じる一方で、

お金では測れないもの、得られないものもあると思いました。

陳腐かも知れませんが

暖かくなったのは母親の心だけでなく、店主の心もきっとそうです。

そしてこの少女にとって、この時の店主の親切は、

生涯を通してもう1つのユニコーン、宝物になるかも知れません。

 

わずか5ドルほどのことで、少女、母親、店主3人は

プライスレスの豊かなギフトを得たように思います。

それをわずか数十秒のシーンの中で表現したこのCMは

やっぱり素晴らしいと思いました。