闇に光を見る力

とある国のとある田舎町の夜は真っ暗です。

街灯があまり無いので

晴れた夜、月がまだ上って来る前に、

その真っ暗闇に無数の星が光ります。

たなびく煙のように小さな星が集まって星の大河を作っている場所もあれば

我こそはと競い合うように強い光を放つ星、星、星・・・で空がいっぱい、

満天の星とは、まさにこのことだなあと目を奪われます。

 

それでふと思いました。

暗い闇の中では、キラキラ瞬く星はもちろん

一筋の光ですらすぐ目につくのに

実際の生活になると、苦しく辛い経験や理不尽に傷つけられた事など、

目も心も、その暗い面、闇にばかりに囚われがちだなあと・・・。

 

そんな時に偶然、ある動画を見つけました。

フランスで起こったテロ事件で、大怪我をしたオーストラリア人女性の記録でした。

その動画の中で

大きなトラックを暴走させて、多くの人をはね殺した運転手についてどう思うか訊かれた時、

彼女は次のように答えています。

「私は犯人のことなど考えたくもありません。

この事件で私が語る話は、その犯人についてではなく

私を助けてくれたフランス人男性やその他多くの人々、

かけつけてくれた友人や家族についてです。

つまり愛の物語なんです。」

 

理不尽な行為、しかもテロ、しかも異国でとても苦しい経験をしたにもかかわらず、

この若い女性の態度は

「自分は決してテロに屈しない、こんな不正には負けない」と言っているようで、

意地とも言える、とてつもない強さとプライドを持っているのだと思いました。

そしてその強さが、自分に起こった悲惨な出来事ではなく、

その中ですら、美しいものに気づく力となったのだと思います。

 

乳がんで亡くなった小林麻央さんも、生前

彼女の人生を代表するのは、病気ではなく

夢、その実現、愛、そして大切な家族など、病気以外にたくさんあり、

彼女の人生はもっと色どりに溢れた人生だったので

子どもを残して逝っても、可愛そうだと思わないでほしいと

確かおっしゃっていたと思います。

なかなか言えない言葉です。

本当に強い女性だと思いました。

 

筆舌に尽くせないほどの凄惨な出来事や不条理が起こった場合、

「なぜ自分が」「なぜこんなことが」などなど

大きな怒り、悲しみ、恐怖などの感情が、きっと起こると思います。

この強い女性達にもそういう時期があったかもしれません。

私なら、耐えられないかも知れないなあと思います。

 

それでも

答えの出ない問いを繰り返して闇の中にとどまるよりも

その闇を俯瞰し、起きてしまったことを受け止め

その辛い出来事の渦中でも、

他の人の愛や思いやり、支え、夢などの煌く星を見つけ、

前に進んで行くことを選べる本当の強さを持つ人、

そう言うすごい人が世の中にはいるんだなあと

心から感動し、敬服しました。