皮が血よりも肉よりも濃かった経験

今週のお題「肉」

 

とある国のとある田舎町

親戚が引っ越すことになり

飼っていた羊4頭を「処分する」と言うので

つれあいと友人が手伝いに出かけて行きました。

 

数時間後、帰宅した彼らはコーヒーを飲んで談笑しています。

 

うちは靴を脱いで家の中に入るんですが

コーヒーを飲み終わり、立ち上がった床に彼らの足跡がくっきり。

よく見るとテーブルまで歩いた足跡も点々と。

逃げる羊を追って汗でもかいたのかと思って雑巾で拭くと真っ赤・・・??

処分ってつまりは屠殺か・・・!!と鈍い私

ようやく気づきました。

 

その後

つれあいと親戚2人が大きなエスキーをかついできて

これから肉を切り分けると言います。

「ええ?ここで?」と思いましたが

もうすでに内臓なども切り取った後で

血が滴るわけでもなく

全く臭いも生々しくもないでっかい肉魂を

次々とエスキーから出し、

ダイニングテーブルの上で淡々と切っています。

 

「気持ち悪いならやらなくて良いよ」と言われましたが

私もスーパーの特大パックくらいになった肉を

いつもの料理をしているかのように

部位によって薄切りやステーキ、大きめの角切りに切り

親戚や友人に分けるためにそれぞれ密閉袋に入れました。

量がはんぱないだけで

さっきの生々しい血の跡にギョッとしたのが嘘のように平気。

たぶん

実際に屠殺したところを見ていないからだと思います。

とにかく流れ作業のように肉を切り分けること数時間。

 

ところが

肉を切り終えて一息ついた時、

フェンスにかかっている白いじゅうたんのようなもの4枚を見て

初めて4つの命を屠殺したんだと実感しました。

保存処理のために1ヶ月ほど干すんだそうですが

4頭の羊の(毛)皮でした。

足があったとわかる4つのでっぱりのある、

短いしっぽもついたままの白い4枚の長方形・・・

数時間前までには立体で、しかも生きていて

動き回ったり草を食べたりしていたのに

今はただの平面の皮となってフェンスにかけられ、

風にそよいでいるだけの皮になった羊たち。。。

 

日本にいた時には味わえない経験、

皮は血よりも肉よりも濃かった経験でした。