役割語で翻訳の深さを知る

とある国のとある田舎町で

英語上達のために翻訳を勉強しようかなと思い始めた矢先、

確か “はてなで話題のエントリー” のページだったと思いますが

言葉使いについてのデジタル新聞の面白い記事を見つけました。(朝日新聞デジタル版)

 

洋雑誌の編集長との対談記事でしたが、

その雑誌社がビリー・アイリッシュをインタビューをした際、

その翻訳文に女言葉が多用されているため

「言葉使いに違和感がある」と指摘されたことについてでした。

ビリーのイメージや生き方と女性的な言語表現とのギャップで

あらためて役割語、特に女性に関する表現について

考え直すきっかけになったそうです。

 

有料会員ではないのでほんの一部分しか読めませんでしたが

確かに言われてみれば

ジェンダーの違いで翻訳文が違うことがあると思います。

 

例えば

男性ロックシンガーの発言は

たいてい「俺(たち)」で始まり

だいたいが「~だぜ」で終わるように翻訳されていますが、

女性ロックシンガーの場合は「俺(たち)」はもちろんのこと

「~だぜ」と訳されることはほぼ無いと思います。

 

興味が出てきたので、さらに役割語を見てみると

日本の役割語には

何かしらのイメージに基づくお約束的なものがあるようで、

年老いた男性を表す時には「わし」で始まることが多く

ほぼ「~のじゃ」で終わる気がしますし

上品?な有閑熟女、マダム風を表現するなら

「わたくし」ではじまり「そうざます(のよ)」的な・・・?

 

でも外国人のインタビューを翻訳した文章で

どんなにお年をめした男性でも

「わし」や「~のじゃ」は使われていない気がしますし

どんなに悠々自適なマダム風に対しても

「そうざます」とはあまり訳されていない気がします。

こう言う言葉って、日本語だけの

ある特定の人に対する特定のイメージやステレオタイプから来るのでしょうか。

面白いなあと思いました。

 

ある方言の持つイメージやステレオタイプ

その人物の性格や特徴を表現するために

役割語として使われていることがあるように思います。

 

アニメだと

声優さんの声や表現法などの要素が大きいことを承知した上で言えば

例えば

ドラゴンボールの悟空のイメージは

やはり

 「おめえ つええな オラ わくわくすっぞ」がぴったりで

 「君 強いんだね 僕わくわくしちゃうよ」だと悟空の野性味が出ないし

 「オンドレ、強いやんけ、ワクワクするやないかい、え?ワレ」だとちょっと怖い・・?

かと言って同じ関西弁でも

 「自分 めっちゃ強いやん、わい わくわくしてまうわ」だとなんかやっぱり違うような。。。

  (方言、正しくなかったらごめんなさい。うるおぼえで使っちゃいました)

 

でも

もしかして始めから悟空が違う言い方をしていたら

それはそれでピタッとはまったのかもしれないとも思います・・・

 

そして

悟空のこのせりふを英訳する時

上のようなニュアンスの違いは出にくいだろうし

そもそも出せるんだろうかと思いました

非常に興味深い。

 

日本語って

膨大な文化的背景を包括してとても曖昧な面と

性別や年齢、職業などによって

人のキャラや特徴をピン留めしてしまう限定力もある

とても悩ましいけど

とても興味深い言語だとあらためて思いました。

 

とすると

翻訳は英語力だけではすまないわけで

ヘナヘナ英語力の私には

さらに困難な深みが待っているのか・・・と

あらためて翻訳の深さを感じ入ったしだいです。